T&Y in神戸




由香利は暫くキップで遊んでいたが、思い出したように「お弁当!!」とバックを開けた。

「たあちゃん、お腹すいたよね?」
有無を言わさぬ勢い。
「私も手伝ったんだよ。」
だからか、自慢げに箱を取り出した。

弁当は春らしい彩りの手鞠寿司のお弁当。
筍と木の芽の和え物も春を感じさせた。

「手鞠か?」
「………、分かる?」

しゅるしゅると風船がしぼむように小さくなる由香利。

「俺の好きな物ばかり。」

パッと笑顔になった。
手鞠をひとつ頬張る。
「旨いよ。酢加減も丁度いい。」
「エヘヘ(*´∀`)♪」
照れながら私も、と頬張る由香利。
笑顔で、「美味しい、さすが私。」とまた、照れて笑う。

由香利の笑顔が嬉しい。
思い立って良かったと思った。

一本しか買わなかったペットボトルのお茶をふたりで分け合う。

「なんか、恥ずかしい…」
嫌だと言わない。
ただーーー由香利の唇がペットボトルの口に密着するのを見て、なんだか俺の方が緊張していた。
誤魔化すように由香利の持参したパンフレットを見ながら食べる。
由香利は、「それ、見てるだけでも楽しいよね」と言ってまた笑った。
結局、どこへ行きたいのかと聞けば、先日と同じ答ーーーオランダ館以外は決まっていないようだった。
「じゃあ、たあちゃんはどこへ行きたいの?」
「……。」
由香利はしてやったりと笑う。
「行き当たりばったりも楽しいよ、きっと。」
口をモグモグさせる由香利に、そうだなと頷いた。



「「ご馳走さまでした。」」

由香利と一緒に箸を置く。

「美味しかったね。」
「ああ、旨かった。」

途切れない由香利の笑顔ーーーその頬を指の背で撫でた。





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