スヴィエート王国
「…どうです? お口に合いませんでしたか?」
無言のままの私を気遣って声をかけてくれたのだろうけど、これは感動の沈黙なのだから仕方ない。
ここまで料理が上手いとは思っていなかった。
「いや…とても美味しいよ。 ルーサー、どこで料理を覚えたの?」
「それは良かった! 僕はシェフの息子なので、お料理はお手の物なんです」
シェフか…。料理のセンスは親の遺伝なんだな。
「ありがとう。良いものを見させてもらったよ。ルーサーの料理は天才的だな」
そう言うと、ルーサーはまた甘い笑みを浮かべた。
「ベシー様の午後のご予定は?」
ルーサーはフライパンを洗いながら、私に話しかけてきた。
「そうだな……街へ行こうかと思っている」
「街へ 、ですか? 一体何しに?」
「まあ、友人に就任の報告をしに…と言えばいいのかな?」
ルーサーは なるほど と相づちをうち、濡れた手をタオルで拭いた。
「では、僕達も街行きの服装に着替えて参りますね」
まさか、ついて来る気なのか?
そこまで世話を焼かなくてもいいのだが…。
「ベシー様、準備万端ですよ!」
ルーサーは私の話には聞く耳を持たず、結局3人で行く事になった。
3人とも馬に乗り、宮殿から連なる坂を街に向って降りて行く。
街へ着くと商店街付近が賑わっていた。
そして庶民は、私達の姿を見ると必ず道を開き、一度お辞儀をする。
「これはこれは!特攻隊 隊長のベシー様ではありませんか!!」
八百屋の叔父様が、興味深々で私達の元に寄ってきた。
「きゃぁあ!ルーサー様もご一緒で!」
「あの背の高い方も素敵ですわぁ」
2人も、結構有名人らしい。
ルーサーはサービスで手を振っていた。
クレイグは真っ直ぐ前を見たまま、ピクリとも動かない。
今思えば、本当に変な組み合わせよね。
「特攻隊の方がお見えになるなんて珍しい!」
「もしかして、また奴等が…?」
「おいっ!ヤメろ!冗談はよせ!!」
次第に広まるざわめき。
皆もやっぱり、忘れていない。
「大丈夫だ!安心しろ!私はただ街の様子を伺いに来ただけだ。今のところ、何の変化も見られない」
私が大声で言うと、皆は安堵のため息をもらした。