竜宮ランド(短編)
とその時、少し離れた場所で白髭のおじいさんがこちらを見つめていることに気付いた。



「あ! 竜宮仙人!」



海水を滅茶苦茶飲まされたことを思い出し、僕は「この野郎!」と叫びながら、おじいさんに飛びかかった。



「良雄! やめなさい!」



お母さんが叫んだ。



「だって、こいつ!」



お父さんは僕をおじいさんから力任せに引き剥がした。



「良雄! この人がお前を助けてくれたんだぞ!」



「え……!?」



「何か悪い夢でも見たんじゃろ。坊や、あまりお父さんとお母さんに心配かけちゃいかんぞ」



おじいさんはニコニコしながらそう呟くと、静かにその場を離れていった。



「さあ、今日はもう帰ろう」



お父さんの言葉に僕とお母さんは小さく頷いた。


あの竜宮ランドは一体何だったのだろう。


どんよりとした雲もいつの間にか消え、春の日差しが潮干狩りの客たちを照らしてつけている。



おじいさんの姿は、もうどこにも無かった。



<了>
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8歳のクリスマス・イブ。 桐生澄人は最愛の母・芳江の起こした焚き火が原因で顔面に大火傷を負う。 そして、28年後の現在、売れっ子SF作家・光山龍神のゴースト・ライターをしながら、世間とは隔絶した生活を送っていた。 醜い火傷痕を隠すために、髪や髭を伸ばしサングラスをかけた自分の容貌は、さしずめ磔刑に処された時のイエス・キリストそのものだった。 そして28年ぶりに訪れたホワイト・クリスマス。 澄人は雪で覆われた自宅の庭で思いがけぬ人物に遭遇する。 それは、時空を越えてやってきた「8歳の自分自身」だった。 少年澄人は"事故直前"のあのクリスマス・イブからタイムトラベルしてきたのだ。 澄人の奇跡に彩られたホワイト・クリスマスが今始まる。

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