紫の瞳
プロローグ
「お母さん、どこ行くの?」
紫色の瞳の男児が手を引かれて暗がりを歩いている。
前を歩いている女性は何も言わない。


「ねぇ、どこ行くの?」
男児はもう一度尋ねる
母親らしき女性は振り向くが紫色の瞳を見て、繋いだ手を強く握り返すだけで何も喋らず歩いていく

男児は少し引っ張られるように暗がりを歩く…。

出口も見えなければ、どこから来たかも判らない。

ただひたすらに母親の手を離さぬようについて行くだけ…

何も答えてはくれない母を見失わないように、小さい足を動かしている…
どこへ行くのか、ここはどこなのか、ただ疑問だけを考えて…



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