愛なんてない
「さ、京来なさいって!」
「なんだよ! 別にムリに見せなくてもいいだろ」
京の声が近くなり、里美さんが無理に引っ張ってきてると察したわたしは慌てた。
や、やだ。京に見せるのは心の準備してからって思ってたのに。
急いで鏡の前から離れようとして、履き慣れない白いパンプスで足を滑らせた。
「あっ!」
「危ない!」
傾いたわたしを支えてくれたのは、他でもない京の逞しい腕で。
わたしは不覚にもドキンと胸が高鳴った。
「あ……ありがとう」