愛なんてない
「これはこれはご丁寧にありがとうございます」
お兄ちゃんもそつない笑顔を浮かべ、慇懃無礼に受け取った。
キッチンでは咲子さんがお茶を淹れてるらしくいい香りが漂ってくる。
だけど、わたしはいつも落ち着く香りを嗅いでも今日は苛立ちを増すだけ。
「お、お兄ちゃん。ちょっといいかな?」
わたしはソファから立ち上がってお兄ちゃんを誘った。
「どうした、弥生?」
お兄ちゃんはわたしには穏やかな笑みを向けてくれる。わたしはそれを信じて賭けてみようと思ったんだ。
「ちょっとだけお話があるの」
わたしがちょっと思いつめた様子を見せたからか、お兄ちゃんは「わかった」と言って相良先生に席を外す無礼を詫びた。