愛なんてない
アパート
車がどこに向かっているのかわからない。

けど、相良先生はわたしの家を訊いてこなかったから、ひとまず帰らなくていいんだと思いホッとした。


途中で相良先生はコンビニに寄った。


わたしに苦手なものやアレルギーがないか訊いてきたから、「椎茸とピーマンとにんじん」と答えたら、呆れた顔をして「偏食を直せ」と言ってお店に入っていった。


しばらくして袋を2つ提げて戻り、無言なまま車を発進させた。




たぶん10分と掛からずに着いたのは、よく見る小さなアパート。


駐車場に停めた相良先生は傘を出し、ビニール袋を持って「ほら」とわたしにさした傘を傾けた。


「ずっと車ん中にいるつもりか?」


「……いません」


わたしはカバンを持ち、渋々立ち上がった。


拭いて湿ったタオルを持ち、相良先生と一緒に傘に入る。


< 19 / 412 >

この作品をシェア

pagetop