愛なんてない



畳を踏む軋んだ音がして、相良先生の声がした。


「望月、風呂入っていいぞ」


「あ、はい」


バスタオルを出してくれた相良先生はなぜかもう一つの部屋に入り、扉をぴしゃんと閉めた。


「相良先生?」


わたしが不思議に思って襖越しに声をかけると、こんな言葉が返ってきた。


「俺は見ないから、安心して入ってこい」


……へ?


わたしは一瞬ポカンとして、しばらくして吹き出した。


「相良先生……ってもしかして。とんでもなく純情?やだ、意外過ぎます」


クスクス笑ったわたしの笑い声が気に食わないのか、相良先生はムッとした声で反論してきた。


「違う! これはな……レディファーストだ!」


意味不明。


「先生、全然意味が違うでしょ」


わたしは更に大きな声で遠慮なく笑った。


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