愛なんてない
わたしは泣き腫らした目で黙々とパンを口にした。
恥ずかしい……
あんなに泣いたなんて何年ぶりだろう?
きっと相良先生も呆れたよね。先生が着てたシャツがぐちゃぐちゃになっちゃったから。
向かい側に座ってた相良先生が急に立ち上がるから、わたしはビクッと過剰な反応をして気が咎める。
やだ、意識し過ぎだよ。
相良先生は生徒を心配して優しいだけなんだから。
その現実に立ち返った途端にわたしの胸は冷え、重い鉛を呑んだように息苦しさを感じた。
――そうだよね。
相良先生にとってはわたしはただの生徒。特別なんて事はないんだ。
だから、自惚れちゃいけない。期待しちゃいけない。
自分に何度も何度も言い聞かせた。
大丈夫、わたしは大丈夫。
独りは慣れてるから。
しっかりして! お兄ちゃんに心配は掛けられない。