愛なんてない
だるく痛む体を無理やり起こして、わたしは這いながら鳴り続けるケータイに手を伸ばした。
チラッと横目で見れば、お兄ちゃんは寝入ってる。
このところわたしが大人しく従うせいか、お兄ちゃんはわたしの拘束を解いていたから自由に動ける。
着信に続いてと願いながら、わたしはよろめきつつも部屋を移動して電話を取った。
元気を出して。変に思われないようにしなきゃ!
わたしは見えもしないのに笑顔を浮かべ、呼吸を整えてから通話ボタンを押す。
「はい、もしもし望月です」