愛なんてない
リバース






「今晩は俺んちに泊まれよ」


京はそう言ってくれた。


「明日の朝になったら、おまえん家に挨拶に行くからな」


「……うん」


わたしは頷くしかない。


京の気持ちがないのに。


わたしの気持ちもないのに。


どうして、わたし達はそんな約束をしたんだろう?


京は責任を感じたから?


わたしは寂しかったから?


そんな義務感と孤独感だけで結びついた結論に、幸せになる保証なんかあるとは思えない。


それなのに、どうしてわたしは差し出された手を取ってしまったんだろう?


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