愛なんてない
弥生と同じ名前だ。
葵と同じ姿だ。
だが、しかし。
はっきり言えばれだけだし、それ以外は全く違う他人だ。
だからこそ、俺は。
「弥生、済まない。俺はおまえを愛せない。
確かに揺らいだ時があるのは認めるし、おまえと体を重ねた時もある。
だが、おまえは誰でもない弥生だ。沢村 弥生だ。
俺が今求める望月 弥生じゃない。
だから俺は、おまえを愛せない。
そばにいてもつらいだけだ。
おまえはおまえ自身を愛してくれる男の許へ行け」
俺はそう告げて、弥生を。
沢木家のひとり娘の弥生を離した。