愛なんてない
弥生のキスを受けながら、俺は自分を恥じ憎みすらした。
どこまで鈍いんだ……俺は。
どちらの弥生の気持ちにも気付かす。
自分の気持ちすら解らなくて。
俺は、目の前にいる弥生を抱きしめた。
「京……?」
弥生が期待と不安に満ちた瞳で見上げる。
以前は確かに揺らいだ心。
葵を想う気持ちがあったから。
だが――
今は。
俺は弥生の頬を手のひらで包み込んで、口づけた。
ただし、それは額に。
「京……?」
怪訝な弥生に、俺はきっぱりと告げる。