可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「ゴラッ馬鹿渚!ババア言うな!お姉様だ!おまえの所為でまた俺が『教育不行き届き』だとかって、婦人会のお姉様方にイチャモンつけられてボコボコにされたらどうしてくれんだ!!」

「っは。ババアどものご機嫌取りが。そんなに年増好みなら迎え役は荒野に譲ってやるわ。連敗中の荒野もババアにだったらモテんじゃねえの?」

「おまえなあッ、ちょっと自分はイケメンに生まれたからって、兄ちゃんに向かってなんつうこと言って……」


荒野さんは何か渚に反論しようとして、でも玄関に立ったままのあたしに気付いて聞いてきた。


「渚?そのお嬢さんは……?」
「うあ。もしかしてカノジョ?カノジョ?渚がウチに連れてくんの初めてじゃん!」


そう言って飛び出してきた弟くんは、目の形とか渚にどことなく似てるけど、渚よりももっとやんちゃそうな顔していた。雰囲気も渚よりかなり軽い感じで、あたしに駆け寄ってくると「うっひゃ。すっげ美人じゃん!」なんて騒ぎ出す。


「やべやべ。超カワイイんですけど!モロ俺のタイプ!!美人な年上大好物!!」
「……哉人、おまえちょっと黙ってろ。……渚。おまえな、平日の彼女の持ち込みは原則禁止だって、我が家の決まりで」


「あんさ、荒野、哉人」


渚はお兄さんの言葉を遮って、突然とんでもないことを言い出した。


「何も訊かずにしばらくこいつ、ウチに置いてやってくんね?」


突然の申し出に、お兄さんも弟さんも口をぽかんと開けている。

あたしもあまりのことに呆気にとられる。

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