可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

何が楽しいのか、佐々木達は困惑しているニクちゃんを他所にたのしげにゲラゲラ大声で笑いだす。すると、思いがけないことにあたしの前の席に座っていたクラス委員の山根が、突然立ち上がって佐々木達に食ってかかった。


「ちょっと佐々木たちっ。あんたたちの話、すっごい不愉快。教室でそういうこと言うの最低じゃん?せめてどっか別のとこでやってなよ」

クラスが暗黙のうちにも山根に同意するような雰囲気になったけど、大勢でツルんでいる強みなのか佐々木達は凝りもせずに言い返す。

「うるっせぇな。山根さ、おまえ人の話勝手に聞いてんじゃねぇよ」
「別に聞きたくないんですけど。聞かれたくないならおっきな声で喋るのやめてくんない?うざいし」

「んだと、てめぇ」
「………おいおい、いちいち山根なんか相手にすんなよ。それよかさ、崎谷って簡単にヤラせてくれそうじゃね?いつも『ぼっち』で人に飢えてるから、優しくしてやったら簡単に落ちそうじゃん、あの女」

「………なんだよ、おまえあのブス、セフレにしたいの?」
「つかメス奴隷的な?あいつ細いし、バックから顔みないようにヤったら結構イケんじゃね?」
「おまえ鬼畜だな、言うことまじサイテーじゃん?」


聞くに堪えないくらい馬鹿な話で笑い出した佐々木達に、山根が「あんたたちいい加減にしなよ」とブチ切れそうになったときだった。


「-------ごちゃごちゃくだんねぇこと言ってんじゃねぇよ」


静観していたはずの王様が、いきなりそんな言葉を吐き捨てたから、教室の空気が一変した。渚はあきらかにめちゃくちゃ不機嫌だ。その理由がわかってしまったから、あたしは机の上でぎゅっと拳を握り込む。


(渚、いいよ。そんなヤツ、放っておきなよ……)


「おまえら女一人に絡みまくって馬鹿じゃねぇの?」


(いいんだよ。だってあたし、べつに佐々木なんかに何言われたって気にしないし)



「んだよ水原、そんな怒ることねーじゃん」

佐々木たちは王様に不興を買うのを恐れてなのか、途端にへらへらしだす。

「そうそう、ただの冗談だしさ」
「マジであんなブス、俺らが相手にするわけないじゃん」
「ま、『ぼっち』がヤりたいって言ったら抱いてやってもいいけどさ」


懲りずにそこでまた馬鹿笑いしだすと、渚が机を蹴っ飛ばしたのかガタッと大きな音が立った。

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