可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「さっき冬ちんからこっそり聞き出したんだけど。今ね、佐々木は生徒指導室で、水原くんは保健室にいて、これから怪我看てもらうために眼科連れていかれるんだって。そんで診察終わったらまた学校戻ってきて、お説教付きで生徒指導室行きだって」
「…………だから何」
「たぶん厳重注意くらいで停学にはならないと思うけどさ。崎谷っち、行ったげなよ」
「…………悪いけど、意味分かんないんだけど」
「ね、この前、HRデーの日にさ、水原くんと一緒にいたすごい可愛いコってこの人でしょ?」
渚とは他人のフリを通そうとするあたしを指さして、山根ははっきりと言った。
「へへ、誰にもバレてないと思って油断してたっしょ?けどあたし、伊達にメイクに凝ってないっての。他のコには見抜けなくても、あたしはすぐ分かったよ。前から、崎谷っち、ほんとはすごく可愛いのに勿体ないな、あたしがメイクしてあげたいなってずっと思ってたから」
言いながらも、立ち止まりそうになるあたしを山根は強引に引っ張って保健室に向かおうとする。
「だからさ、大きなお世話ってわかってるけど、ちょっとでいいから水原くんの傍にいてあげて」
「……………あたしは、あいつのカノジョじゃないんだよ?」
「でも水原くん、崎谷っちと一緒にいるときがいちばんたのしそうな顔してるよ?リア先輩とチューしてるときより、崎谷っちといちゃいちゃしてるときの方がずっと楽しそう。前にさ、井原駅のホームで水原くんとキスしてたっしょ?あたし友達と遊んだ帰りにたまたま見掛けちゃったんだよね」
「……………それはただ、ふざけてただけ」
「うん、わざと周りに見せ付けるみたいにキスしてじゃれあってたね。ラブラブカップルみたいですごいうらやましかった」
もうあたしが言い逃れできないような証拠を積んでおきながら、山根はあたしを脅すでもからかうでもなく、ただ淡々と言葉を続ける。
「あんなの見たらさ、誰だって水原くんの特別が誰なのか分かるよ。……崎谷っちなんでしょ?」