可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「仁花、そろそろ隠れてろ」

柱に掛かった時計を見て渚が言う。いつもより低いその声に、渚も緊張していることが伝わってくる。

この場には渚のお父さんと荒野さんもいるけれど、聖人を刺激しないために渚のお父さんとあたしは給湯室に隠れていることになっていた。


「………ねえ渚。やっぱあたし、自分のことなのに全部渚たちに丸投げするなんて出来ないよ……」
「丸投げなんかじゃねぇよ。おまえにだってやってもらうことはある。それにおまえが自分であいつとのこと、ケリつけたがってるのも分かってる」

渚はブラインド越しに外を確認しながら言ってくる。

「けどはじめからあいつのペースで来られちゃ、あいつの都合のいいように話進められるかもしれないからな。せめて話のイニシアチブくらい握らせて貰うんだよ。……おい来たぞ」

渚に追い立てられて、あたしはパーテーションの影になっている給湯室に入っていく。そこに用意された椅子に座りながら、あたしはこの先行きの見えない聖人との対面が始まるのをただ待つしかなかった。


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