可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。


「ねえ、崎谷さ」
「放っておけよ。あいつのことは」



あたしを呼ぼうとした七瀬由太をさえぎって、渚が言う。



「……けど渚。崎谷さん、俺たちと同じ班になったんだし」
「どうせ崎谷に行きたい場所なんてねぇよ。俺らで好きに決めようぜ」



反論しようとする七瀬を、渚は冷淡な言葉でぴしゃりと押さえつける。

『根暗ぼっちになんて眼中にない』って渚の態度に、後ろに座っている女の子たちがうれしそうに喋りだす。





「なんだ。水原くん、『ぼっち』と同じ班になる口実利用して、ほんとは由太くんとだけ周りたかっただけなんじゃん」

「もともと群れるのきらいそうだもんね、あの人。そういうとこがかっこいいんだけどさ」

「頭いいしあの顔だし、周りは水原くんのこと放っておかないからね。でも実は佐々木たちのこと迷惑がってたんじゃない?」

「そうかも。由太くんとだけはずっと仲いいみたいだけどね」





まるであたしなんて存在してないかのように、七瀬由太と行き先を相談しはじめた渚の声が聞こえてくる。




あたしのことを突き放した、渚の冷めた態度。


その様子がどことなく浮かれてるように見えたのは、たぶんこの教室の中であたしだけなんだろう。




そんなことを思いながら、胸の中のざわつきを押さえ込むようにあたしは数字の海に没頭していった。




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