可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「や。余裕なくした感じのおまえイジるの、マジたのしいとかって思って」

「なくしてねぇし」



即答すると、渚は勝ち誇ったように笑みを深める。



「そやってムキになってるとこ、おもしろすぎ」




床に転がされたまま、もう一度キスしてこようとした渚に向けて脚を跳ね上げてやった。

爪先で蹴るつもりで、踵が渚の頬に当たった。


渚は一瞬何が起きたか理解出来ないように固まって。それから顔を盛大に顰めた。




「………ってぇな。マジ信じらんねぇ。いくらなんでも普通女が顔面蹴りとかするか?つぅかお前、今パンツ見えたぞ。黒いの」

「見れば?ってかマジ腹立つわ」



絡んでこようとする渚を突飛ばして、ローテーブルの前に座りなおして問題を見る。






【問1 : aを正の定数とする。nを0以上の整数とし、多項式の…………………】






だめだ。

全然だめ。

内容入ってこない。



数字や公式が走り出して広がって繋がって、ひとつの解答に収束していくときの、あの万能感が降りてこない。





今日の午後の授業はずっとこんな感じだ。

理由は分かってる。あの忌々しい、実習時間の班決め。



< 43 / 306 >

この作品をシェア

pagetop