可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
教卓のまん前の席は、じゃんけんで負けて希望した席からあぶれてしまった不運なヤツに贈られる、いちばんのハズレ席だ。
しかも隣が『根暗ボッチ』っていうオプションが付いてくるから、なおのこと人気がない。
そんな席に、七瀬由太は席替えの開始早々に座り込んだ。
背の高い七瀬が前に座ると、後ろの席の生徒が黒板が見えづらくなるかもしれないという懸念からか、担任の冬木は『七瀬もうちょい後ろ行ったら?』なんて声を掛けたけど、七瀬は淡々と『ここでいいです』と返していた。
いつも渚と一緒に行動して、席も渚の近くをキープする七瀬由太の思わぬ行動に、『由太くんと水原くんって喧嘩でもしたの?』って噂が立ったけれど。
そういうわけでもないらしく。
席替えの後もふたりは普通にしゃべったり、移動教室では相変わらず仲良く連れ立って歩いたりしてる。
----------よく分からないヤツ。
気弱そうだった七瀬由太は、あたしがあしらってやったときとはどんどん別人みたいになっていくような、そんな奇妙な印象。
今も目が合ったというのに、逸らしもしないであたしをじっと見ている。
気詰まりになるくらいのその視線の強さに気付かないふりして、あたしはコンビ二の袋を持って教室を出て行った。