可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
聖人とキスした瞬間。言いようのない違和感や嫌悪感が沸いてきたけれど。
いつでもどんなときでもあたしの味方だった聖人との、ぬるま湯みたいな関係を壊すのが嫌で。
あたしは拒むことが出来なかった。
そんな打算の所為で、最初はどこか遠慮がちだった聖人からのキスが頻繁になっていって。
それが当然のように毎日になって。
日常になっていって。
『ニカ、大好きだよ』
気付いたら後にも引けず、でも先にも行けないような、そんなどんづまりの状況になっていた。
思えばその頃から、あたしは自分が気付いてなかっただけで、ビッチだったのかもしれない。
理由がよくわからないキスをそれでも受け入れてさえすれば、聖人はこれからも変わらずにあたしの味方でいてくれる。
愛情でも恋でもないくせに、あたしは孤独にならないためだけに聖人にキスを売り渡し続けた。
自分の体を捧げることで男からお金や快楽の対価を得ようとするビッチと、あたしがしてたことは何も変わらない。
-----------そんなあんたが、こんな可愛らしいオトコノコひとりあしらえないわけ?
そう思った瞬間。
目の前に迫っていた七瀬の、きれいに結ばれているネクタイを引っ掴んで。
まるでご主人様の意向に沿わない子犬を躾けるように思いっきり引っ張っていた。