これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「……今はまだ……でも、もう少ししたらお話します。そのときは聞いてください」

彼女の潤んだままの瞳が俺を見つめていた。

俺に対する申し訳なさそうな視線にいたたまれなくなる。

そんな顔をさせるために言った言葉じゃない。

今は時間が経つのを待つしかない。ただそれでも何かしてあげたくてシートに置かれた彼女の手をゆっくりと握った。

雨に濡れた手は冷たく、俺が触れるとビクッとした。

けれどそれ以上嫌がることはなく、強く握ると同じ強さで握り返してくる。

俺たちはそれ以上何も言葉を発することはなかった。

ただ強くつないだ手がふたりを結び付けていた。

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