これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 高浜さんが向けてくる視線がまともに見れずに、フロントガラスを見つめた。

「あの……実はこれ知人から安く借りているんです。とは言ってもそれなりの金額は払ってるんですよ。だからいつもお金がなくて……」

 最後は、誤魔化すようにおどけて言ってみた。しかしそれが余計に不自然だったのか、眼鏡のブリッジを指で上げた高浜さんは、まだ何か言いたそうだった。

「あの、今日はどうもありがとうございました。クロにもよろしくお伝え下さい」

 焦りすぎて、最後クロに対してまでビジネス口調になる。そんな私の様子がおかしかったのか、高浜さんは先ほどの難しい顔を崩して笑顔になった。

「わかりました。よろしく伝えておきます。おやすみなさい」

「気を付けて帰ってください。おやすみなさい」

 車を降りてゆっくりと走り出した車を見送る。こんな甘い気分で誰かを見送る日がくるなんて以前の私なら想像もしていなかった私は、今日一日を思い返し頬を緩ませながら部屋へと戻ったのだった。
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