蒼の歩み
というわけで、カップのバニラアイスを2つ購入し、車内で食べることにした。私は断ったのに、彼は私の分のアイス代も払ってくれた。小さいものとはいえ、奢ってもらうのは申し訳ないな……。



「ほーれ」



「わっ」



そんなことを考えていると、頬っぺたに冷たい物があたる。もー、と文句を言いながら頬に当たったソレを彼から受け取る。



……咄嗟に、同じ味のアイスを選んでしまったけれど。もし私がチョコ味とかを購入したら、違う味だからあーん、し合いっこしたり……。そういうことできたのかな……。



って、何を考えているんだ私は。案外蒼君の、私はいつもアレコレ考えるというのは当たっているのだな、と苦笑せざるを得なかった。



……それって、蒼君が私のことをよく見てるってことなのかな。



「ん、うめェな」



私もカップの蓋を開け、木べらのスプーンでアイスを一口。



「ん、ホントだ」



そんなおめでたい考えは、口の中のアイスと一緒に溶けてしまえ。





「バニラアイスにお酒かけて食べたい。ミルクで割るデザートなお酒、ってやつ」



以前、そのようなお酒を見かけたことがある。ミルミクス、という名前だったような。



「おめー酒弱ェんじゃなかったか」



「ありゃ、よく覚えてたね。美味しそうだな、ってふと思い出したのー。かけるだけの少量でも酔うものなのかなぁ?」



「バニラアイスにカルーア少しかけると旨ェよ。すげー甘いモンイケるんならな。酔うかどうかはそいつがどの程度いけるかによるんじゃねーか」



「それもそっか、蒼君、かけて食べたことあるの?」



「ああ。リキュールは割るんならいいが度数は高めなんで掛けすぎねーようにしろよ」



「はーい」



蒼君はいつの間にかアイスを食べ終わったようで、車を発進させた。目的地まであと、半分の距離もないとのこと。



いつも、家族でのドライブ時は車の中での時間は退屈だったが、蒼君といると違うみたい。時間もあっという間に過ぎる。楽しいと時間が早く過ぎるというのは、本当なんだと実感した。





蒼君、何処に連れてってくれるのかな。
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