蒼の歩み
11
蒼君とは、真面目な話も世間話も楽しい話も、彼との話は何でも面白くて。私の心に刺激を与えて。途絶えることのない会話を楽しんでいると、目的の場へと到着したようで。



「此処……?」



「ちょっと降りるぞ」



着いた場所は、海が見渡せる丘、というのだろうか。



「真歩、見てみ。太陽が沈むところ。すげぇ綺麗だ」



「わぁ……!」



言われて目を向けると、夕焼けが海へと溶け込でいるのが見えた。世の果てでは空と海が混じる、なんて歌詞を耳にしたことがあるが、そこに太陽が加わることによりとても幻想的になって。私の拙い言葉ではとても表現しきれない。……蒼君ならば、こういう表現も得意そうだ。



「空の色が、何とも言ぇねぇ位に美しいよな」



……と思っていたら、流石の蒼君もこの素晴らしい景色を口にして伝えるのは難しいのかな。



「私、こんな広々とした風景で夕焼けを眺めたの、初めて……!」



「でしょ。此処はすげえ好きな場所で、毎年来るんだ。いつもは水平線に沈む前に雲で隠れちまうんだが、今日はラッキーだった」



「最後まで沈む太陽を見送れるのは、なんだか良いね」



「太陽デケェし綺麗だよな。んで、太陽が沈むと漁船の漁火がポツポツ出てくるんだ」



「ほぉー……。私、日の出よりも入り日が好きだな」



「な。つーか、そもそも朝が苦手って話もあるんだがな、俺の場合」



「それは生活時間帯の所為もあるから、仕方ないよ。それにしても、夕日ってこんなに綺麗なものだったんだね……」




「昼間はそうでもないんだが、沈む夕日ってのはみるみる表情が変わって見応えがある。なかなか見れねェらしいぞ、海に沈む夕日」



「そうなんだ、じゃあ。蒼君と一緒だから……、見れたのかな」



なんてね、と照れ隠しに付け足すと、意外にも



「そうかもなぁ」



だなんて返答がきたから。……私の頬は、夕日の様に染まっていった。




「……でも、よかったの?私を連れて来て。いつも、1人で見てるのよね?」




綺麗な景色や美しいものを、他人と共有するのもいいけれど。独占したい気持ちも分かる。私を連れて来てくれたのは嬉しいが、ほんの少しだけ疑問に思っていた。



「んー、そうだけど。なんでだろーな……。なんか、真歩には何でも教えたくなっちまうんだ」



それって……。
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