スイートな御曹司と愛されルームシェア
「もう、こういうところでそんなことは言わないの」
「ダメ?」

 丸い鳶色の瞳で甘えるように見上げてくるのは、以前と同じだ。そういう目をすれば、咲良が嫌と言えないのを知っているのだ。

「でも、だって」

 口ごもる咲良に、翔太が言う。

「今言わないと、咲良さんはそのまま帰っちゃいそうだからね」
「そ、そんなことないけど、でも、脱いだらもう着られないもん」
「大丈夫、乱さないようにするから」
「そんなの無理よ」
「じゃあ、服を買ってあげるから、いっそのこと着替えて帰ろう」
「もう!」

 咲良が赤い顔で睨んだとき、翔太が視線を咲良の背後に投げた。怪訝に思って振り向いた咲良は、二次会に行くためにシャンパンゴールドのパーティドレスに着替えた百々花と、ダークブラウンのスーツ姿の貴裕が歩いてくるのに気づいた。百々花は、お色直しのワインレッドのカクテルドレスのときに持っていた、深紅のバラのブーケを持っている。

「お姉ちゃん!」
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