スイートな御曹司と愛されルームシェア
 いつも頼りなさげで、ついつい世話を焼きたくなる。そんなところが果穂にはあった。だが、咲良にはない。普段からスーツをビシッと着こなし、きりりと髪をまとめ、キビキビと動く。それはすべて講師として信頼されるためにやってきたこと。夢である仕事を進めるために必要なこと。そう思っているのに、そのすべてが欠けている――必要ではない――果穂の方を恭平が選んだことが皮肉に思えてならない。

「がんばればがんばるほど、恭平くん好みのかわいい女じゃなくなっていったんだ……。私、いったい誰のために……何のためにがんばってきたんだろう……」

 そうつぶやいたとき、頬に温かく湿ったものが触れた。それが翔太の舌だとわかったのは、涙をすくうように頬を舐め上げられたときだった。

「ひゃ」

 思わず視線を向けると、淡く優しい笑みを浮かべた翔太と目が合った。

「咲良さんはかわいいですよ」
「そんな嘘はいらない。自分でもわかってるんだから。同情なんかやめてよね」

 ふてくされたように言ってシーツに顔を押しつけると、耳たぶに翔太の唇が触れた。

「もう、何するの」

 煩わしく思って首を振ると、髪を優しく撫でられた。


< 88 / 185 >

この作品をシェア

pagetop