スイートな御曹司と愛されルームシェア

 その日の朝食は、翔太の作ってくれたスクランブルエッグにウィンナー、レタス、それに咲良が大量に買って冷凍しているクロワッサンを軽くトーストしたものだった。翔太を拾って、もとい連れ込んでから早四日、ローテーブルの向かい側についこの前まで赤の他人だった男が座っていることにも、違和感を覚えなくなっていた。それどころか、そこに翔太がいてくれることを今ほど嬉しく思ったことはない。

(誰かがそばにいてくれることがこんなにも安らげることだったなんて)

 お一人様が長いから気づかなかった。そんなことを思って小さく笑うと、翔太が不思議そうに首を傾げた。

「どうしたんです?」
「んー、何でもない」
「何かお口に合いませんでした?」
「翔太くんのご飯はいつもおいしいよ」
「それならいいんですけど……」

 腑に落ちない表情の翔太がフォークでウィンナーを刺すのを見て、咲良は楽しいことを思いついた。

「ね、今日はバッティングセンターに行こうか」
「え?」

 ウィンナーを口に入れようとしていた翔太が手を止める。

「仕事は夕方からだし、この前は私のテニスに付き合ってくれたから、今日は私が翔太くんに付き合うわ。久しぶりにバットを握ってみない?」
「いいんですか?」
「うん、行こうよ。私もすっきりできそうだし」

 咲良が乗り気なのを見て、翔太が小さく笑みを浮かべた。
「咲良さんがそう言うなら。じゃあ昼前に行きましょうか」
「わーい、楽しみぃ」

 昨日の恭平とのことを思い出したくなくて、咲良はわざとらしいほどはしゃいだ声を出した。
< 94 / 185 >

この作品をシェア

pagetop