スイートな御曹司と愛されルームシェア

 言い出しっぺなのにバッティングセンターに行ったことがないので、咲良は翔太に行き先を委ねた。そうして彼が連れて行ってくれたのは、最寄り駅から私鉄と地下鉄を乗り継いでいった市街地にあるバッティングセンターで、駅から徒歩十五分ほどの、緑に囲まれた広い施設だった。

「あのネットのところがそうなのね」

 白壁の低い建物の向こうに、グリーンのネットが見える。時折、マシンがボールを打ち出す空気を切るような音や、バットが球を打つ鈍い音が聞こえてくる。

「ドキドキしてきた」

 受け付けを済ませ、コインを買ってバッティング場に入った。翔太がバッティンググローブを嵌めながら問う。

「咲良さんは初めてなんですよね?」
「ええ」
「じゃあ、一番球速の遅い七十キロでいってみますか」

 翔太は手前のケージに咲良と一緒に入り、操作パネルにコインを入れて、球速や変化球の選択を始めた。

「簡単なのにしてよ。空振りばっかりじゃ悔しいから」
「あはは。初めてならなかなか当たらないかも知れませんね」
「なんですって、言ったわね。バットを振って当てればいいだけなんでしょ? そんなの簡単よ」

 ムッとする咲良に、翔太がいたずらっぽく訊く。

「じゃあ、俺と勝負します?」
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