今宵、桜の木の下で

なっ、何っ!?


「び、び、びっくりした」


胃の辺りがひゅるひゅるっと軽くなったような気がした。

ああ、あれだ。遊園地の絶叫マシン。

一番高いところまで登りつめてから急降下で落ちていく、あの感覚……。


……ねえ、今……何が起きた??


『びっくり、したの?』

人差し指をにょきっと立てると

『ふうん……』

男の子はその小さな指先を私に向かって突きつけた。


『ねえ、ねえ』


「……はい?」


何ていったらいいのかな。

どうも……ちょっと……様子が、――。


『おねえちゃん』


その子供らしからぬ落ち着き払った異様な雰囲気に、静かに肌が粟立っていく。


落ち着け、ワタシ。

相手は子どもだ、――。


笑って返事をしようとも

「ど、どうしたのかな??」

頬が引きつって上手く口角が上がらない。


『あのさ』


辛うじて頬を緩ませて


「……んんっ??」


男の子の視線に合わせるようにしゃがみ込む。

丸くて真っ黒な瞳がパチパチと瞬きを繰り返した。


『おねえちゃんとぼくがおはなしできるってことは……』

「うんうん」

『おねえちゃんて、ぼくがみえてるんだよね??』

「んっ、――??」



それって、どういう意味なわけ……?

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