歌声は君へと
「ね?」
「……キアラ、ここにいて。様子見てくるから」
うん、と不安そうに頷いたキアラはスノウから降りる。
私はそのまま、浅瀬に近寄っていく。横にはスノウがいて、先に歩いていく。そして「駄目よ、スノウ」あろうことか前足でべしり、と人を踏みつける仕草をしたのである。
手加減してはいるだろうが、何だか色々と違う気がしてならない。
スノウ自身、敵かどうか、あるいは生きているかなどを調べているのだろうが。
半身を水に使ったままの人は、確かに"いっぱいつけてた"。
腰には剣が下げられ、ナイフらしきものもある。飾りなのかなんなのかよくわからないのもあり、キアラのいう通りだ。
まずうつ伏せから仰向けにさせる。ぐっしょりと濡れているからそれなりに重く、さらに武器なんかが引っ掛かるため苦戦した。
顔が露となる。
「……異国人?」
ほどよく日焼けしたような肌に、黒髪。身に付けているものや肌から見て、この辺りの人ではないだろう。
体つきもただの旅人としては逞しい。ならば傭兵だろうか?
胸が上下しているから生きてはいる。だが、「酷い怪我」と太ももからの出血がある。腕にもあるようで、このままだと危ないだろう。
近くにきたキアラが「痛そう」と、顔を歪めた。
「……よし!」
「イシュお姉ちゃん?」
「家に運ぼう。キアラ、ちょっと手伝ってくれるかな」
「うん!」
スノウの背中に乗せて運ぼう。
その前に、と私は剣なんかを外しにかかる。
そして、腕を肩に回し、スノウの背中に乗せる。そして落ちないよう支えながら、森のなかを戻っていく。
その間多少揺れているのだが、目を覚ます気配がない。何があってこんな怪我をしているのかわからないが、と男の横顔をちらりと見た。
―――異国人。
どこの国の者かわからないが、少なくてもここの国の人ではないだろう。