もっと★愛を欲しがる優しい獣

「……私が良いっていうまで家に出入り禁止ね」

そう言うと、がーんと雷に打たれたような衝撃が鈴木くんに走った。

「そ……それだけは!!俺、佐藤さんのご飯がないと死んじゃうっ!!」

捨てられた仔犬のようにふるふると震えながら訴える鈴木くんを見て、決心が鈍りそうになるが心を鬼にする。

「ダーメ。ちゃんと反省して」

「そんなぁ……」

鈴木くんはがっくりと肩を落とすと、最後の晩餐となるかもしれない肉じゃがをチビチビと食べ始めた。

(ごめんね、鈴木くん……)

私は心の中でこっそり鈴木くんに謝った。

陽たちが隠していたゲームソフトを見つけたのは、本当は3ヵ月以上も前のことだ。

鈴木くんを家から遠ざけるためには、他に方法が思いつかなかったのだ。

(……これで良いんだ)

私は寂しさを押し隠すように唇を噛みしめると、自分に何度も言い聞かせるのだった。

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