もっと★愛を欲しがる優しい獣

私はひとまず、我が家に電話を掛けた。

「もしもし」

<姉ちゃん?>

樹が出てくれてホッとする。樹がいれば家のことは大丈夫だろう。

「そう、亜由よ。雨が凄いけど、そっちは大丈夫?」

周囲を見渡せば私と同じように家族に電話している人が大勢いた。

<ああ。こっちは皆、家にいるよ。雨は降っているけど>

電話越しにひろむの泣き声が聞こえてきた。また、陽にでも泣かされているのか。陽はゲームのことになると年下の弟にも容赦しない。

「今日は遅くなるわ。電車が運休になったの」

<帰れるのか?>

「仕方がないから隣の駅まで行って迂回して帰るわ。冷凍庫に作り置きのおかずがあるから、先に食べていて」

<わかった。姉ちゃんも気を付けて帰って来いよ>

< 30 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop