もっと★愛を欲しがる優しい獣

「す、鈴木くん……。脅かさないでよ……」

その顔はまだ青ざめていた。もしかしてと思って尋ねてみる。

「怖いの……だめなの?」

佐藤さんはああっと悲しいため息をつくとソファの肘置に突っ伏した。

「まさかホラー映画だったなんて……。タイトル詐欺よ……」

やさぐれ具合から察するに、心身ともに疲れ切っているのだろう。

きっと俺が普通に見ていたから、怖いのが苦手と言い出せなかったのだ。

確かにタイトルの“サマーレイン”という部分だけ見たら、ホラー映画とは思わないのかもしれない。

“サマーレイン”は“夏の夜に血の雨が降る”という意味らしい。

「大丈夫……?」

とりあえず俺はテレビの電源を消した。続きは家で見ることにしよう。

「もう、挫けそう……」

そうやって震える声で訴えながら手探りして見つけた俺の胸板に顔を埋める。

(……珍しい)

「鈴木くん、お願いがあるの……」

「なに?」

ぎゅうっと苦しいくらいに甘えられたら、嫌とは言えない。

……俺はホラー映画より佐藤さんに弱い。

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