もっと★愛を欲しがる優しい獣

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「ちゃんといる―?」

「いるよ」

風呂場からの呼びかけに、苦笑いしながら応える。

確認しなくてもこの場を離れたりしないのに、それでも呼びかけはとまらない。

「どこかに行ったりしてな―い?」

「してないよ」

……ひとりでお風呂に入るのが怖いっていうからてっきり一緒に入ってくれって言われるのかと思いました。邪な考えですいません。

脱衣所と風呂場を遮る壁は俺が思っている以上に厚いようだ。

時折聞こえてくる水音をBGMに、途中だったゲームを再開する。

今日は脱衣所の床を温めることに徹しよう。

「どこにも行かないでね―?」

「行かないよ」

そう言いながらポチポチとボタンを連打する。

「本当に―?」

……まだ、疑うつもりなのか。

よっぽど映画が怖かったのかと呆れを通り越して微笑ましく思える。

エンカウントした敵にとどめを刺しながら告げる。

「佐藤さんが嫌って言ってもずっと傍にいるよ」


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