泣くな。って君が言うから
再開
高校2年生

この頃、太一はずっとバイトのお世話になっていた
友達のお父さんの会社に正式に入社した。

中卒でも、どうしようもなかった自分を見込んでくれた期待には応えたい。

太一はきっとその思いでいっぱいなんだと思う。
元々は努力家の太一。
きっと成功する。

今までのように家で顔を合わす時間は
ぐんと減るけど応援したい。

私も頑張ろう。


太一と顔を合わさない日が続いた。

夜遅く帰宅して
真っ先に私の部屋へと向かってくる足音
ドアを開け「ただいまぁ」と囁く。

私の髪を撫で、キスをし
「おやすみ」と囁く。

私はその時間が愛おしくて
寝たふりをする。

「お疲れさま」

そう言いたいけど

起こしてしまう。と思われて
その時間が無くなってしまうような気がして
いつも寝たふりをしている。



太一が好き。

大好き。

幸せが溢れてくる。


そう確信した日から1週間ほどして
バイト先に、あいつが現れた。

赤ちゃんを抱いたギャルとあいつ。

太一と過ごす中で少しずつ薄れてきていた
嫌悪感や痛みが
ついさっきの出来事のように蘇った。
手が震え、呼吸がうまく出来ない。

でも逃げたくはなかった。

私はあいつを睨みつけた。

私に気付くと気まずそうに

「ひ、久しぶり…」

とだけ言い席についた。

「誰よ?昔の女?」

奥さんが、あいつに詰め寄る

「ちゃうよ、一也の妹ちゃん」

「あぁ、ビッチな(笑)」


……はい?

どんな噂流されてんねん。

あの場には何人もいたから
どんな話になっていても別に良いけど

ビッチて…

笑けた。

被害者でも何も言わないと
尻軽呼ばわりされるんや。

そう冷静に考えられたのも
太一の存在があったからかもしれない。

チラチラ私を見てくる
あの嫌な視線も
太一との時間を思い出しやり過ごした。

それから、よく来るようになった。
1人だったり
友達とだったり
別に話しかけてもこない
ただチラチラ見てくるだけ。

気持ち悪い。
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