泣くな。って君が言うから
卒業
あれから特に大きな事件もなく
私は高校を卒業する日を迎えた。

母、姉、兄、かーくん、太一
に感謝を伝え
いっぱい泣いた。いっぱい笑った。

太一が「デートしよう!」と思いつき
急いで着替えに帰る。

洋服選びに戸惑っていると

「何着ても似合いますよ、お嬢さん」

と太一は着替えながら
意地悪そうな顔をする。

「だって!デートとか久しぶりやもん!」

「んじゃ俺好みで決める!いい?」

「お願いします(笑)」

クローゼットの中を物色し

「これやな」

と差し出したのは私の第一候補の服。

同じ好み。

たったそれだけの些細な事ですら
嬉しくてニヤけてくる。

服を受け取り着替えようとしていたら
視線に気づく。
ドアに寄りかかってタバコを吸いながら

「どうぞ?お着替えください」

と、また意地悪そうな顔をする。

「見んといて!!」

乙女かってほど
顔が赤くなるのが自分でも分かった。
太一がすごく大人に見えて
急に緊張してきた。

「はいはい(笑)はよしてなぁ」

「おまたせー」

リビングで待つ太一の元へ小走りで行く。

「どこ行きたい?」

「ん〜………あっ!USJ!」

「おけー」

駅とは反対方向に歩いて行く太一。
私は不思議に思いながらついて行く。

「間に合って良かった」

そう言って太一が駐車場を指差す。

「えっ!?車!?」

免許を取りに行ってた事も
車を買ってた事も全然しらなかった。

「この日に間に合わせたかってん(笑)」

仕事、忙しいのに
私の相手もしなくちゃならないのに
教習所に通って
お金貯めて車買って
2人で乗りたいと卒業式まで我慢して

あぁー!!もう!!
愛おしい!!

「だいぢぃ、だいずぎぃ」
せっかくのメイクも台無しの
ぶっさいくな顔で泣いた。

太一は大笑いして

「志穂から好きって初めて言うてくれたのに、その顔はないわぁ(笑)」

笑い過ぎってくらい笑う。

「はい、今日は笑う日!」

そう言って両手を広げる。

私は抱きついて自分からキスをした。
不意をつかれた太一は
顔を真っ赤にして

「それ、ずるいな…」

と顔を隠した。

どの太一も愛おしくてたまらない。

もっと色んな顔を見たい。

もっともっと
私でいっぱいになってほしい。
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