泣くな。って君が言うから
かーくんはよく母の料理を手伝っていた。
母を取られた気がして
掴み所がなくて
私はかーくんが苦手だった。

だから面白い太一と過ごす時間の方が多かった。

大きくなったら結婚しよう。

ありきたりな小さな約束も交わした。

私にも兄妹はいるし仲良しだけど
年が離れているせいか一緒に遊ぶということはなかった。

置いてかれてる感じがする。
その寂しさを埋めてくれたのはいつも太一だった。


私はよく泣く子だった。
わがままが通らない時
聞いてもらえるまで泣く。

そんな時いつもヒョコっとかーくんが現れ
私の鼻をつまんで

「泣くな」

と微笑む。

その顔は本当に優しくて
その顔が本当に大好きだった。

いつしか、わがままを通す為でなく
その顔を見たいが為に
泣いてる私がいた。

子供なんて単純。

かーくんが苦手。
だなんて
すっかり消えていた。
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