彼が涙を流した理由
「あさひードーンマーイ」





ポンポン、とあたしの肩を叩くのは3年間一緒のクラスの佐妃。





「佐妃でしょ!あたし推薦したの!」





佐妃の背中を筆箱で叩いたけど、佐妃は完全に無視。





「あさひーもう決まったことだし?諦めなよー」





「だって……」





図書委員って、昼休み図書室でカッコよく本読んで、人が来たら予約の作業をパパッとやる、クールな人でしょ!?





「もしかしたら、カッコいい男子とかいるかもよー?」





ドキン。





「…………あ、ごめん、つい…」





「……あ、いや、大丈夫だよ」





あたしは、5年前にお兄ちゃんを亡くした。





理由は交通事故。





お兄ちゃんを殺した人はもう捕まったけど、未だに『男子』という言葉を聞くと、少し怖くなる。





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