MIRROR-ЯOЯЯIM
OWT
退院してからも、私は都樹と話さなかった。

同じ家に住んではいるのだが、私は帰るとすぐに部屋に引きこもってしまうのだ。

こんなことをしたところで、何も解決しないのは分かっている。ただ、私は都樹と話してはいけない。そんな固定観念が、私に住みついていた。

学校では、ある噂が立っていた。

「理奈って、押上と何かあったらしいよ。」

私は答えをはぐらかしていたのだが、それが私を見る目を冷ややかにさせた。

中には、癒紀を殺したのは私なんじゃないか、と言う子までいた。

私は、飛び降りたことによって自分の首を絞めたのだった。最初は、人生を終えるつもりだったのに。

はからずも行われた席替えでは、私と都樹は教室の対角線の端と端になった。

ある日の放課後。

「現川。」

私を呼ぶ、誰かの声。思えば、先生以外で名前を呼ばれたのはかなり久しぶりだった。

声の主は、ミハイルだった。

「…何?」
「今日、一緒に帰る?」
「え?」
「いや、最近押上と仲悪いみたいだし、何かあったのかなって思って。ちょっとでも知ってたら、相談相手になれ…。」
「ゴメン。」

ミハイルの言葉が遮られる。

「私…今はそんな気分じゃないから。」

私は教室に背を向け、速足で歩きだした。
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