クロスストーリー
途端に襲う震えと吐き気、答えの出ない疑問と共に体は目に見えない不安とストレスで悲鳴を上げようとするが肉体はそれを許さなかった。
自分の事のみの記憶を失い、周りに助けてくれる人も見つからず、ようやく見つけた文明の欠片は自分の知っている物とは全く違う…まだあどけなさの残るような青年にとって、これはどれほど辛い事なのだろうか?
口元を手で押さえながらも別の本を探す。

10分後…

「…だめか。」

乱雑に散らばった本を元の棚に戻すとそのまま座り込みもたれかかる。
全ての本を見比べて自分の手掛かりとなるものを探したがそれも徒労となった。
自分の中にあった最悪の予感が当たった事を理解したと同時に猛烈な虚脱感に襲われる。

「キュキュ?」

「あぁ…解ってるよ、大丈夫だから。」

自分に懐いた狐を胸に抱き、その柔らかな毛並みを撫でる。
襲い来る強烈な疲労と睡魔に蝕まれ、思考も止まりそうな中で可能な限り優しく…。
上った太陽が赤く染まり傾いた頃、1人と一匹はいつの間にか眠ってしまった。












コッ…コッ…コッ…

二つの「モノ」しか居ない部屋に近づく足音。
その主がこの男の物語を動かす事となる。
だがそれは決して明るく平穏が約束された童話ではなく
暗く哀しい物語となるかもしれない。
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