彼は黒い薔薇のよう



呑まれそうになる意識の中、瞼を開けると白いベッドを染める漆黒の薔薇の花弁が鮮明に映る。



黒い薔薇は、彼のようだ。


そっと手を伸ばせば、指先に天鵞絨のような滑らかな肌触りが伝わってくる。



「つぐも」



わたしの頬に触れたのを合図に、わたしは目を閉じた。


指を絡めて、黒曜はそっと口づけをわたしに落とす。



いつか教えてもらった黒薔薇の花言葉は



『貴方はあくまで私のもの』



狂った彼の、わたしへの異常なまでの支配欲にふさわしい。



暗闇で感じた口づけは、まるで何かの儀式のように感じた。


再び開いた視界に映ったのは、美しい笑みを浮かべた黒曜の姿。


わたしをその腕に囲み、耳元でそっと呟いた。




「つぐもは、ずっとボクのモノだ……」




その台詞に、わたしの口元が少しだけ緩む。





あぁ、やっぱり……彼は黒い薔薇のようだ。










Fin.






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