彼は
『少しは片ずけてよ』なんてとても言えたものではない。
極力自分の身を守れるように私は両親に従って生きてきた。


「あんた、彼氏いたの?」


突然、母に話しかけられる。
反射的に体はびくりと反応した。
部屋を片ずける手を止めて母を見ると、視線はテレビに向いたままだ。
バラエティーをみており、時折あははと笑う様子がみられている。


「菜々美?聞いてる?」
「…っ彼氏なんて、いない…」
「彼氏でもない男の家に泊まったのね」


ソファに座ったままの母がテーブルに手を伸ばし、小さな箱を手に取る。
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