君との距離は1メートル 【完】





「…おはよ〜」





「杏奈おはよー!


てか聞いて聞いて聞いて!!」




まだ憂鬱な気持ちで教室に入って近くにいた奏子に挨拶をしたらものすごい勢いで駆け寄ってきた。




「な、何っ?!」





ガシッと手を掴まれて



「こっちきてーーっ!」





そのまま廊下に連れ出された。











「な、なんなのー?!奏子とまって「しっ!!!」






廊下を爆走して第2校舎へ行く渡り廊下に入る手前で止められた。




「だから、なんな「しーーーっ!!」






抗議しようとすると奏子は人差し指を立てて口にあてた。


それから小声で耳打ちをしてくる。







「静かにしてよ!気づかれちゃうから!」






えー、なんなのよー…。






眉を寄せて首を傾げて奏子に説明を求める。




「まぁ、みてみて」




奏子は小声で、だけど楽しそうな声と悪戯っぽく目を輝かせて渡り廊下を覗き込むように指差した。





訳が分からず渡り廊下を覗き込む。





「ーだから、俺と付き合って下さい」






え?!!






「私、好きな人がいるからごめんなさい」







愛巳?!






「いや〜、11月までにもう5回は告白されてるよ」






奏子はウフフ、と笑って楽しげに見ている。







まだ何か話しているみたいだけど、さっきよりも声が小さくなってこの距離だと聞こえない。







「愛巳可愛いからさぁ、本当に人気なんだよね。



でも、全部断ってるんだよ。

光君が好きだからさ」






好きな人がいるからー






愛巳の一途さが伝わってくる。







私、こんな可愛い子と同じ人を好きになっているんだ。







どう考えたって、彼女にしたりするってなったら、選ぶなら、





可愛い方がよくない?




「愛巳…可愛いもんね…」









光君だって例外じゃないはず。



誰だって可愛い子の方がいいよ。



愛巳は可愛いし性格もよくって運動も勉強もそれなりにできる。





「愛巳はオールマイティーだよねー。本当羨ましい!」






私はまだ渡り廊下にいる2人を見ていた。



相手は知らないクラスの人だけど、なんだか粘ってるみたい。



愛巳が何度もぺこぺこと頭を下げてるのが分かる。





「一途なんだね、愛巳は。

光君も可愛い方がいいよねぇ〜」






えへへ〜とゆるい口調で奏子に笑いながらふざけて言うけど、



ちょっと胸が痛くなった。






「あ、いや、光君は可愛いさとかで人を選んだりはしないでしょ!」




私の思いを感じてくれたのか、奏子が焦ったような口調で光君をかばう。






もちろん、そんな風に光君を思ってるわけじゃないけど…。









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