週末アンドロイド
××××××ー1ー
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…此処ハ、ドコ? 私ハ誰…?

ホルマリン浸けの様な巨大なビーカーの中に、私は居た。
息はできる。
しかし、周囲には桃色の様な液体とその色の靄がかかり、視界の邪魔をする。
どうにか掻き分けて、前を視ようと努力するが、無駄足の様だった。
私は負けずに液体の中でもがいていると、前方から、カツンカツンと靴音が聴こえた。そして、ピタリと止まった。

「おやおや、これは元気が良ろしくてなによりです。お嬢様」

どうやら、相手は男の様だ。
「私の事がお分かりですか? お嬢様」
男は私の事を『お嬢様』と呼び、慕う。
「どうなさいました?」
…貴方ハ、一体、何? 私ノ何?
男の顔が見てみたいが、この桃色の液体と靄に抗う事が出来ない。
「まさか、声が出ないとでも?私を認識できないとでも?」
『声』? 『認識』?
「『口』で出し、『目』で見るのです。どうぞ、お嬢様」
すると突然、私の視界が開けた。
『見えなかった』モノが『見えた』。
そこには、やはり1人の男が立っていた。まれに見る、執事服。肩まで伸ばした、ストレートの長い髪。そして、紫色に光る両目。その時、私は『綺麗』を感じると共に、『恐怖』までも感じた。
「お嬢様、お誕生おめでとうございます」
「誕、生…?」
私は初めて『鳴き声』を発した。これが『声』というモノか。
「おお…!おお…! なんというご成長…! 貴方こそ、探し求めていた、私の…私の…!」
その時、私は瞼がずん、と重くなった。呼吸もさっきよりも、ずいぶん苦しくなる。
「何…コレ…」
「おめで…うござい…す、お…様。貴方は、××××××成功者、第1体目で……いま…」
もう、身体に力が入らない。
私は、両目をつぶった。

「永遠の一時を、薺 愛莉殿」

そして、私はこの惑星の記念すべき、××××××第1体目成功者として、他の異なる種族に送り込まれた。
本来の役目も知らずに。

私…私は…
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