週末アンドロイド
××××××ー2ー
××××××ー2ー

誰かが私を呼んでいる。
誰かが私を視ている。

目を開けると、桃色の靄に包まれ、辺りはよく見えなかったが、私はホルマリン浸けの様な巨大なビーカーの中に入っている。

「ねえねえ、前から気になってたんだけどさ」

誰かが軽く私に話しかけている。

「無視しないでよ。これは君の為にやってることなんだからさ。そろそろ自覚しなよ~じゃなきゃ、大変な事になっちゃう」

『大変な事』とは何なのだろうか?
どんな存在なのだろうか?

「本題に戻ろうか? まぁ、そんなに重要でもなんでもないんだけどね。もう一回話そうよ。僕も暇だし。遊んであげたいしねぇ」

何なんだ、この男。胡散臭い。
話なんてしたくない。私に近寄るんじゃない。

「酷いなぁ。こっちだって頑張ってるんだよ?知りたくないの? 君の正体とかさ!」

…正体?

「おっ、興味持ってきたねぇ。よかったよかった! 君が知れて喜んでくれるなら、僕だってそうで構わないよ? 嬉しいし!」

別に教えられなくとも、自分は自分。
それくらい分かる。理解できる。

「え? そうなの? 嘘だ~! じゃ、言ってみなよ、自分の事をさ。簡単でしょ? さんはい!」

私は…

「ん? どうしたの? さんはい!」

私は…私は…!

「…分かんないよね。解んないよねぇ。だって君も一応『アレ』だもん。仕方ないよね」

…さっきから、何言って…

「でも自我がありすぎるかな? じゃあ、もう少し大人しくしてようね~」

桃色の靄が一斉に晴れる。
辺りが見渡せるようになる。
目の前に白衣を着た男が、ニコニコしながら立っていた。
…私は、あの男と長時間話していたのか?
そのとき、私は何かが見えた。
思い出してはいけない、見てはいけない何かが、そこに。

手を繋いで、笑い会う男女。
赤い雲。赤い雲。紅い…蜘蛛。

「ひっ、ああ….....ああああ!!」

私は初めて何かを発し、同時に何かを出した。
そこから、見た光景は赤い紅い液体と、その液体の上で、浮いているモノ、物、者…。

「嫌だ…嫌だよ…やめて…やめて!!」

「あ~あ。失敗しちゃった。自我がないほうがいい、って上から言われてたのに。まぁ、いいや。第1号は完成してるし。失敗作第1号って事でいいよね」

男は泣き叫ぶ私に背を向け、暗闇に手を振り、
「おめでとうございまーす。あなたは、××××××失敗作第1号でーす。まぁ、自我を持ってしまった第2号でーす。あちらの世界でまたどうぞ、お楽しみください」

そして、私は瞼がずん、と重くなったとたんに意識を完全に切り離された。

「それじゃあ、またね。もう一緒に僕と会っちゃダメだからね~…なんて聴こえてないかぁ」

そして、男は誰にも聴こえないような声で呟いた。

「永遠の一時を。薺 愛莉ちゃ~ん」




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