週末アンドロイド
On Monday 1

「薺 愛莉ッテ、誰?」

衝撃の一言の後、私はあまりよく覚えていなかった。
目が覚めたのは、いつものベットの上で、覚えているのは、愛莉ちゃんの何か言いたげそうな無表情と、母の心配した声。目から生温かい液体が頬を横切ったくらいだ。
「今何時だ…」
いつもベットの横に置いてある、携帯電話の電源を入れ、時間と日付を確認する。
「月曜日…4時30分…か」
道理で辺りが暗い訳だ。私はこんな時間まで寝てしまっていたのだろうか。
もう一度寝てしまいたいが、眠気は不思議と襲ってこないし、無理矢理寝ようとしても遅い時間に起きてしまったりしたら、気がひける。
「仕方ない…起きるか…」
仕方なく、ベットからゆっくりと起き上がり、衣装ケースを開け、学校の制服に身を包んだ。
学校の制服を着終わった時、ふいに一階から卵焼きをフライパンで焼く音が聞こえ、美味しそうな匂いが漂い始めた。それだけで食欲をそそられ、お腹が空いてきた。
私は一階へ降りる事にした。

「あら、今日は随分と早いじゃない」
階段を降り終わった後、母に話しかけられた。
「ん? まあ、早く目が覚めちゃって」
「二度寝しなかったことを誉めてあげるわ」
「…ありがとう」
何気ない、早い朝の母との会話。随分と久々で、懐かしい気がした。まあ、昨日は散々だったし、仕方ないよね、と思いながら食卓の席へ着く。
「本当に昨日は散々だったよね~。愛莉ちゃんって訳わかんないよ」
何気なく、昨日の話題を母に振ってみる。すると母は、味噌汁を作る手を止め、不思議そうにこちらを見た。
「…? どうしたの?」
「どうしたのって…こっちが聞きたいわよ」
「え?」
すると母は、眉をひそめて、
「愛莉ちゃんって…誰よ」
「え、あの、は? 私の妹っていう設定?の…」
「妹? 早く起きすぎて頭が変になったの?」
母はそう言って、キッチンのすぐ横にある棚をごそごそし始めた。その棚から、救急セットを取り出し、その中から体温計を出す。
「はい、どうぞ」
母は、その体温計を私に差し出してきた。
「いや…熱とかないから。いや、だから…」
すると、体温計をエプロンのポケットにしまうと、
「…もういいわよ。わかった。早く朝食食べちゃって。学校行ってきなさい」
私は誤解をされたまま、朝食を食べ、学校に行かなければならなかったのだ。
「最悪の月曜日だ…」

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