今年の夏休み
岡田んちは、店からチャリで5分、
歩いても10分かからない所にあるここいらじゃ有名な高級億ション。
父ちゃんが結構大きな病院の院長で
母ちゃんも料理研究家とかで本を何冊も出してたりして
2人とも忙しく走り回ってるから
1人っ子の岡田はあの広いマンションで1人淋しく…なはずないだろ。
自由気まま、好き勝手やってるっつうの。
羨ましいというよりムカつく。
なんであんな奴が庶民が行くような高校に通ってんだろう?
一度聞いたけど笑って交わされた。
触れられたくない事情があるのかも。

しかし岡田のいいところは、セレブリティなのにタカビー振らないところ。
妙にウマが合い、入学式でたまたま隣の席になったのがキッカケで
つるむようになったのだ。
遊びに行けば、いつも発売されたばかりのゲームソフトがあり、
マンガは読み放題。
冷凍庫の中にある食べ放題のアイスクリームは
うちにあるような6個300円とかのお徳用アイスじゃなくて
岡田の母ちゃんがお取り寄せしたとかいう高級アイスクリームだ。
1つ食べたけど美味しいとかそういうのはよくわからなかった。
ただ高そうな味、って思っただけで、
俺はコンビニで買うガリガリ君がいいなって思った。

烏龍茶の2リットルのペットボトルと1.5リットルのコーラのペットボトルを
店で買い、土産に持っていった。
土産っつっても、この暑さと労働で喉がカラカラの俺がガブ飲みしたかっただけなんだけど。

インターフォンで自動ドアを解除してもらい
いつものように高そうな花がどーんと活けてあり、
大理石のつるつるの床のロビーを通ってエレベーターに乗り込む。
何度来ても慣れることなくきょろきょろと辺りを見回しながら
岡田んちに到着した。
< 27 / 57 >

この作品をシェア

pagetop