佐藤くんは甘くない


俺の涙が、結城の瞼にあたって少しだけ震えた。小さな反応だけど結城が生きてるんだって思って、俺は何度も名前を呼んだ。


そうしたらゆっくり瞼を開けて、もう俺のことなんてよく見えないくせに、声だってうまく聞こえないくせに、あんなに血だらけになってるのにさ。あいつ、俺の頬に手を当てて笑うんだよ。


それから聞こえるか聞こえないくらいの小さな声で言ったよ。





───よかった、恭ちゃんが無事でって。





……そのあとのことは、よく覚えてない。

たぶん、住民の人が通報して救急車呼んでくれたんだと思う。結城は救急車に運ばれていった。俺はそのあと、警察の人がきて保護されて───よく、覚えてない。



次に気が付いたら、病院の手術室の前で座ってた。


隣にお母さんがいた。お母さんは俺を抱きしめて、大丈夫だからきっと大丈夫だからってしきりに言ってた。お父さんは泣く寸前みたいな顔でずっと手術室のランプを見上げてた。


少し離れたところに、結城のお母さんとお父さんがいた。




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