【短】あの人と私~赤ずきんの恋~
野田先生に、資料室にある進路資料を取ってきてほしいと言われ、私は資料室に行った。


窓のない資料室は真っ暗で、私は暗闇の中電気のスイッチを捜した。


スイッチを見つけたと同時に、ドアが開く音が聞こえて私は後ろを振り返った。




「高橋君‥」



会いたくて会いたくてたまらなかった、あの人が目の前にいる。


突然現れたあの人の姿が、幻のように思えた。



あの人がドアを閉め、光を失った私は暗闇の中
あの人に抱き締められた。




「や‥やめて!」



本当は違う。

本当はこの背中を抱きしめたい。

もっと温もりを感じたいよ…。



だけど、


だめだよぉ…。




力強いあの人の手で、私は壁に押しつけられた。



「あれが最後のキスなんかにさせない」




暗闇の中、あの人の真剣な瞳が私の心を捕らえていた。



あの人の激しいキスに、私の心は乱れそうになる。



あの人がブラウスの上から私の膨らみに触れ、私の体が反応してしまう。



「や‥めて…」




このままではいけない。


あの人の大切な時間を、私は奪いたくない。




好きだからこそ


私はあなたを好きになってはいけない…。





涙が零れ落ちた。


私の唇からあの人の唇につたっていく涙‥。




あの人は私が泣いていることに気づき、キスをやめた。


そして、スカートに入れかけていた手を止めた…。






私は、あの人の顔を見ないまま資料室から出た。





本当は会えたことが嬉しかった。


あなたに触れられて嬉しかった。




だけど、こわいよ。



あの人の想いが…。


あの人の時間を奪うことが…。


あの人を想う自分が…。












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